今月、風邪診療の名著2冊がともに改訂版が発売されました。
誰も教えてくれなかった「風邪」の診かたとかぜ診療マニュアルです。
ともに前著も読み、自分の風邪診療が大きく変わったきっかけになった本でしたので、今回改訂されたためともに購入して読んでみました。
今回はこちらを紹介します。
この本の基本的な考え方は、「風邪を知ることで風邪以外の疾患を見逃さない、みやぶる」というものだと思います。
救急外来や初診外来をはじめると、とくにこの時期から冬にかけて「風邪をひきました」といってやってくる患者がたくさん訪れると思います。数が多いため忙しく、疲労もあるため曖昧な診断で処方し帰宅させてしまい、中には風邪にみえて重篤な疾患だった、なんてことも少なくはありません。(咽頭痛できた心血管病変など)
そもそも風邪って何?と聞かれて明確に説明できますか?私は初期研修医の頃は明確に説明できず、ふわっと風邪と診断し処方して帰宅させていたことも今振り返ればたくさんあるのではないかと思います。
この本では風邪(風邪と言わないほうが良いのかもしれませんが)を定義し、風邪を風邪と診断する方法、そして中に紛れた風邪以外を診断するtipsが勉強できます。
第1章の風邪を風邪と診断するノウハウでは、典型的風邪症状から鼻症状メイン型、喉症状メイン型など症状別での対応を学べます。風邪具体的な処方例、説明の仕方ものっており即実践できるのではないでしょうか。個人的には、咽頭痛は嚥下痛か否か、modified centor criteria の一歩進んだ解釈、副鼻腔炎の画像評価の意義、肺炎での胸部Xpの意義、そして患者への説明の仕方などが特に勉強になりました。とりあえず画像評価している方も必読です。(よく胸部Xpと副鼻腔Xpがセットで撮られているのを散見します。)
第2章は風邪以外の診断についてです。風邪とはどこか違う疾患、発熱+αの対応について学べます。風邪として見逃してしまいがちな疾患、ピットフォールがたくさんのっており、自分の穴を埋められます。それぞれの項目は数ページで構成されコンパクトに纏まっています。個人的にはTSHの扱いや髄膜炎のところが勉強になりました。
第3章はこれからの医療、感染症診療に対する筆者の想いあふれる感染症診療の戦略です。
高齢化社会が進んでいく中、高齢患者にどう対応していくか、誤嚥性肺炎に対する抗菌薬選択、多職種との連携から、高齢患者の入院のデメリットを踏まえた早期内服治療・早期帰宅戦略など、高齢患者であるからこそ対応に悩むテーマに対する筆者の考え、想いが詰まっています。
肺炎で高齢者、A-DROPも高いからとりあえず入院して抗菌薬点滴、そこから脱却し、高齢患者の予後、ADLを踏まえた治療戦略、これからの時代の医療のベストを模索する上で良いヒントとなる章だと思いました。個人的にはR=耐性からの脱却、および簡易懸濁法が考えさせられました。
第4章はAMR時代の内服抗菌薬、そしてインフルエンザに対するお作法が学べます。研修医の頃は抗インフルエンザ薬を乱れ打ちしておりましたが・・・適応や実際の患者への説明の仕方含めて学べます。
改訂されるまでだいぶ空きましたが、前著からほぼ倍のボリュームとなりました。しかしとても読みやすいためすぐに読破できました。この本は通じてそれぞれの導入に前の章のまとめがのってあり、繰り返し勉強することで身につくようになっています。また、エビデンスだけでなく、筆者の意見や想いも存分に含まれているところも魅力ではないでしょうか。風邪だけでなく今後の医療も考えていく本です。
風邪を扱うことのある医師はぜひ手にとって読んでみてください。必読です。
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