世間は騒がしい中皆様お疲れさまです。日々忙しいですね。本は読んでもなかなかブログを書くところまでたどり着きません。
SNSなどで検査も感度特異度について話題になっており、ふと昔読んだ本を思い出しました。
・実際の診療で尤度比を用いて診断に迫ることができる
・「なんとなく〇〇っぽい」から「何%で〇〇だ」と言えるようになる
この本はざっくりいうと、問診、身体所見をとり、尤度比を使いこなして診断に迫ることができるようになるための本でしょうか。
医学生は感度、特異度、尤度比や2✕2表などを必ず習うと思います、医師国家試験でもよく出てきますね(昔は少なくとも)。でも実際の臨床でどう使うかまでは習わないのではないでしょうか。
例えば実際の診療で上級医から「この症状があるから〇〇っぽいよね?」「ほとんど〇〇だよ」などと感覚的な言葉で説明されることはないですか?
その「っぽい」や「ほとんど」というのは実際はどの程度なのでしょうか。
この本では尤度比を使ってその感覚的な指標をを客観的な指標に変える、ひいてはそこから検査の意味や身体所見の意味を理解することができるようになります。
前半では診断疫学の基礎、感度、特異度や尤度比のおさらいから始まり上田先生との対談(EBMを利用した診断について)があります。
後半がこの本のメインであり、実際に遭遇する症状、疾患に対して身体所見や検査のエビデンス、尤度比をいかに用いて診断にたどり着いていくかを実践的に学ぶことが出来ます。
例えば19番勝負の1の風邪症状、インフルエンザか?です。
インフルエンザの検査確率を10%とした場合、それぞれの病歴、発熱と咳や悪寒などの尤度比を用いれば問診だけで検査後確率は80%にまでなる事ができます。
一方、この後インフルエンザ迅速検査の陰性尤度比を用いれば、検査をして陰性であっても確率は80%から70%までたったの10%しか低下しません。
この本を読めばインフルエンザの迅速検査結果よりもその前の病歴や症状が大事であること、検査前確率の重要性が理解できるのではないでしょうか。
このようなことをよく見るCommonな19の症状、疾患の診断を用いて実践的に学んでいきます。
例えば呼吸困難の診断、COPDと心不全の鑑別に本当にBNPは測定は必須なのか、肺塞栓症を疑って造影CTを撮るか否かの基準、右上腹部に圧痛がある時のMurphy兆候陰性で胆嚢炎は否定できるのか、などなど実際の臨床で悩むことに役立つ情報が満載です。
そのような情報を通じて、実際の尤度比を使って診断に結びつけることを学べるので、この所見やあの検査をすることで診断に近づけるのか否かを考えながら診療できるようになると思います。
検査をするより問診したり身体所見をとることの意義が理解できて、所見をとる楽しさや面白さも感じてもらえると思います。
検査前確率をざっくり稀であれば0.1%、比較的commonであれば1%、かなりcommonであれば10%と気軽に考える
このように考えて実際の診療に役立ててみてはいかがでしょうか。
この本を読めば身体所見を取りたくなったり、上手に検査オーダーができるはずです。
この本で尤度比の使い方をマスターしてから内科診断リファレンスやマクギーの身体診断学を利用して他の様々な症候、疾患に応用していきましょう。
今回は実際の診療と尤度比を学ぶ本を紹介しました。
検査ももちろん大事ですけど、その検査をした結果どうなるのか、本当にその検査が意味のある検査なのか、それで否定できるのか、そういったことを理解していただけたらと切に願います。
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