はじめに
読みたい新刊を多数積んでしまったので少しずつ読み出しています。
その中でも非常に読みやすく、即戦力となりそうな本を紹介します。ざっとしか読めていませんので、しっかり読んだらレビュー更新します。
ただいま診療中シリーズの最新作は初診外来です。このシリーズは読みやすいですね。
初診外来とのことですが、苦手に感じている人は多いのではないでしょうか。なかなか診断に迫れない、どこから手をつけてよいかわからなくなって困ることがありますね。
この本ではそういう困った時のアプローチ法を学べます。
初診外来となっていますが、臨床推論のための本とも言えると思います。
・何も思いつかない時の診断へのアプローチ法が複数学べる。
・診断に迫るためのより適切で効率的な問診、身体所見が取れるようになる。
Part1 診断推論の基本
この本のメインパートです。様々なアプローチの仕方を学んでいきます。
1.SQを使って臨床推論をしてみよう!
2.VINDICATE+Pで攻める!
3.解剖学的アプローチのコツ
4.前向き推論と後ろ向き推論
5.system 1とsystem 2を使いこなす─dual process theory
6.ピボット・クラスター戦略を活用しよう!
7.疾患仮説を意識した病歴聴取をしよう!
8.引き算診療による診断推論をマスターしよう!
9.小人探しで疾患を絞り込む!
10.問診から患者の日常生活を映像化(イメージ)せよ!
11.患者受療行動を活用した診断推論
12.疾患仮説に基づく身体診察をしよう!
─Hypothesis Driven Physical Examinati
13.診断エラーとバイアス!
14.器質疾患と心因性疾患を見極める!
15.ICTツールを使って適切な診断にたどり着こう!
16.Difficult Patientに対応しよう!
17.他科との交渉術〜コンサルテーションの流儀!
18.SQバンドル
本文より
こう上げてみるとなんとなく知っているという方も多いと思いますが、実際どう使うのか、どう使って良いのかイマイチわかっていない、という方も多いのではないでしょうか。(実際私もそうでした。)
具体的にどう使い、実際の臨床でどう活用するのか、この本では具体例を用いながら記載されています。
全体を通して大事な基本は疾患仮設を想起するためにできることを学ぶ、でしょうか。
診断に入るためには疾患仮設が想起できていることが大事です。system1でもsystem2でも疾患仮設が想起できている必要があります。では、できない時にどうするのか、すなわち、どこから手を付けてよいかわからない時にどうするのか。そこで使える手法が並んでいます。
最初に出てくるSQが、幹となっているものと考えます。キーワードをSQに置き換え、またより抽象化し、それを実際に検索をかけ、検索から絞られて診断に迫れる、その具体的な方法が記載されています。SQを適切に設定できることが診断への近道ですね。これ以降も適宜SQが出てきますので、SQには読み終える頃には使い勝手の良いものになるはずです。
最後の方にはよく使うSQがまとめてあり、携帯して参考にしたいです。情報にすぐにアクセスできる時代ですので、適切に迅速に検索できることはとても大事です。医師になってからはいかにして早く適切にカンニングできるかは大切な能力です。私もすぐにEvernoteに引用しました。
その後も様々な手法が出てきます。有名なVINDICATE+Pなどは知っている方も多いと思いますが、広すぎて絞れなくて、実際どう使ったらよいか困ったことはありませんか。それをどう有用に使うのか、時間軸という視点を使って説明されています。
他にも解剖学的アプローチでは体表から解剖構造をイメージすることや、Pivot and Clusterでは正確なPivotが大事だけどどうやって選択するのか、またそれぞれのPivotの距離感をマインドマップでまとめておくことなど、すぐに臨床に応用できる手法が満載です。
鑑別診断の手法だけでなく、病歴、身体診察のとり方などもあります。他の本と違うところは、実際何を聞き何の所見をとるのかではなく、どういう意識をもってとりにいくか、その重要性が示されています。
病歴では、疾患仮設を立てて病歴をとると効果的かつ効率的な診療ができ、臨床推論能力が向上すること、問診では患者の行動をイメージできるようににとること(息切れは階段を登って時の息切れがあるのか、途中で休むのか、息が上がるのか)など大事ですね。また、なぜこのタイミングで受診したのかという受診閾値と重症度も忘れたくないポイントです。
身体診察では疾患想起に基づくもの、HDPEが強調されており、想起して取りに行かないと見逃してしまうことなど大事なところです。見ようとして見ないとだめなんですね。
また、Commonな疾患だけでなくまれな疾患を診断する方法、引き算も提示されており、Pubmedのadvanceを使った具体例などはそのまますぐに使えます。
他にも特によくやってしまいがちなことに、心因性と診断してしまうことががあると思います。よくわからんしMUSだしわからないから心因性として片付けてしまっていないですか?
この本ではプラセボ効果と病歴と身体所見の矛盾で心因性としてしまわない具体的な手法も学べます。
外来セッティングとしては、よく困るDifficult Patientのの記載があります。BATHE techniqueや I Message、疼痛閾値と神経科学的な説明など、類書では見たことなく非常に勉強になりました。
以上のような様々なすぐに使える手法や知識が満載です。通読するのも、単元ごとに読むのもありだと思います。すぐに読めますのでPart1だけでも通読するのがおすすめです。
Part.2 実際の症例でみてみよう
Part2ではPart1で実際学んだ手法を利用して診断に迫っていきます。
対話形式、カンファ形式と言えるのではないでしょうか。実際カンファで行われている様子を見ているかのようです。実際の症例で上記の手法をどのように用いて、どう検索するのかが参考になります。
導ける人が居なかったらこんなうまくいくのかな、って思ってしまった面もありますが、繰り返し診断戦略を利用して、実際の疾患で使いながら学んでいくのが大事だと思いました。
おわりに
今回は初診外来の本、同診断に迫るのかを学べる本を紹介しました。
外来をする方だけでなく、不明熱など入院初診から診る方におすすめできます。初期研修医の方では最初にこういった手法を学んでから勉強するほうが効率的だと感じました。
外来セッティングの本ですが、臨床推論の本としておすすめします。
コメント