今回は問診、診察、検査を行う際に、それってほんとに有意義なの?ということがわかる、EBMに基づいた医療に役立つ本です。
この本は上田剛士先生が医学生時代から収集してきた医学情報をまとめた本だそうです。この本のこれだけのエビデンスを一人でまとめていることに本当に驚きを覚えます。
この本は本当に豊富なエビデンスから、様々な検査や症状、病歴などの感度特異度が記載されており、診断に結びつくために実際何が役立つのかが学べます。
例えば、急性胆嚢炎の病歴では右上腹部痛と嘔吐と発熱が重要であることや、(意外と嘔吐は見逃しがちな気がします。)、身体所見では有名なMurphy徴候がありますが実は肝叩打痛のほうが感度が高い印象があるであったりだとか、画像検査では腹部エコーもほうがCTよりも感度特異度が高いであることなどが記載されています。救急で胆嚢炎を疑った時、病歴から疑い血液検査とエコーで診断で十分であり、CTはルーチンでは必要ではないのではないかと考えられます。
腹痛でルーチンで採血とCT、ではなくしっかり病歴で疑い必要最小限で最大の検査を行うことができるようになります。
内科で大事なことは、はじめはもちろんopen questionで行うのですが、その中で鑑別に上がった疾患をより疑う所見、病歴を取ること(攻める問診とも言われますね)だと思っています。そのためにこの本を開けばRule in/Rule outするための重要度がすぐに分かります。SnOUTとSpINですね。
救急や内科初診でこの本を開いて調べて治療する、といった使い方は難しいかもしれないですが、実際見た患者、診断した患者でその疾患のところを読むことで、次はこんな問診をしたら良いのではないか、こんな所見をとったら良かったのではないか、画像検査は必要だったのか、などを自己にてブラッシュアップすることで、より精度が高く、短時間での診断に近づけるのではないかと想います。
もちろん疾患ごとではなく、最初の章では内科一般の主要徴候がのっており、特によく見るめまいや失神は必読だと思います。
初期研修医の頃にはあまりに衝撃すぎて、毎日何ページかを読むと決めて読んだ思い入れの深い本でもあります。
診断を研ぎ澄ます本であると思います。通読は困難かもしれませんが、初期研修医では特に疾患にあたったときにこの本を読めば、より診断に近づく道が明らかになっていくと思います。
確かに太い本ではありますが、実際手にとって気になる疾患のページを読んでみてください。凄さが伝わるのではないでしょうか。
ぜひ一部だけでも読んでみてください。
コメント
[…] この本で尤度比の使い方をマスターしてから内科診断リファレンスやマクギーの身体診断学を利用して他の様々な症候、疾患に応用していきましょう。 […]