この本は便秘について深く、細かくかつコンパクトにまとまった実践的な本です。
・便秘とはなにかをしっかり定義し、分類できるようになる
・なんとなくの治療から便秘症を分類し患者背景に合わせた適切な指導、処方へ
便秘症は日常診療でよく出会うもので、患者が困っていることも多いです。便秘で救急受診される方も散見されます。
しかし、便秘について系統立てて勉強する機会はないのではないでしょうか。なんとなくセットに組まれていた酸化マグネシウムとセンノシド、ピコスルファートをとりあえず使用している、最近は新薬も出てきているからなんとなく試しているけど、結局どの患者にどの薬が良いのかわからない、という方も多いのではないですか?
それをすっきりと、約80ページと非常にコンパクトに纏まっているのがこの本です。
第1章は慢性便秘症とは?です。便秘について実は詳しくないですよね。まずは便秘とは何かを定義し、正常な排便メカニズムを学びます。そして、便秘症を3つ(便秘型過敏性腸症候群、便回数減少型、排便困難型)に分類します。他にも所々で、便秘と死亡率や、腸内細菌と便秘の関連、食べ物で腸の菌叢はリセットされるかなど、疑問に思っても実際どうなのか知らないことが、豊富なエビデンスをもとに随所に散りばめられています。便秘と神経疾患の初発症状や、便秘自体が大腸がんのリスクとならないことなどは非常にためになりました。便秘だと思っている県1位が富山県と京都県というのは面白かったです。(明日から話したくなりますね。)
そして2章は便秘症の治療です。まずは二次性便秘症を除外した後は内服ではなく生活指導を行うことが大事です。具体的にどう指導すべきか、排便時の姿勢や食事、運動について詳しく記載されています。便秘症の方にこういった指導をしたことない方ばかりではないでしょうか。
食事もどのタイプでもみんな均一でよいわけではありません。
不溶性食物繊維やFODMAPはタイプによっては薬にも毒にもなるのです。
とりあえず食物繊維を食べれば良いと思っている方も多いので、しっかり説明してあげることが大事ですね。
そして、後半は新旧の便秘薬が、具体的機序や適応、副作用を含めて詳細に記載されており、その後分類ごとの治療が学べます。
それぞれの分類で年齢や体格、合併症などにあわせておすすめの薬が書いてあるだけでなく、それぞれの便秘薬が向いている患者もまとめてありま非常に実用的です。下剤の使い分けの表や慢性便秘症の治療薬選択アルゴリズムは、外来の際に手元に置いておきたいです。便秘薬の価格まで記載されているのが非常に便利です。
漢方薬もなんとなく使っていましたが、麻子仁丸など刺激性下剤のものも多く、定期内服処方していたのも改めようと思いました。
続いての3章は「便秘の神話に切り込む」です。便秘と肌荒れってほんとにあるの?、便秘とおならの臭いの関係は?、下剤依存性ってほんとにあるの?などなど普段世間ではよく言われていることを、エビデンスをもとに説明してあります。この内容も人にすぐ話したくなる内容ばかりです。
そして最後にはケーススタディとロールプレイングで今までのことを振り返ります。
この本ほど便秘について深くほられた本はないのではないでしょうか。
「つまらない話」というタイトルですが非常に面白く、エビデンスも豊富で明日からの診療にすぐ応用できる本です。読みやすくすぐに通読できますよ。
価格も安いのですべての医師に読んでいただきたいです、間違いなく便秘診療が変わります。
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