プロの対話から学ぶ感染症
今回は4人の著名な感染症の先生による、おそらく無編集に近い対談をまとめた本です。
臨場感があり、その場にいるかのような体験ができます。
・感染症医が病歴、症状、検査から診断を導き出す思考過程が追体験できる。
・感染症に対するアプローチ法が学べる。
おすすめする人
・感染症はある程度勉強してきたが、診断にたどりつく時に苦慮する方。
・複雑な症例になると困るという方。
・感染症医に興味がある初期研修医、後期研修医
この本は初心者向けではないですが、感染症をある程度勉強してきて(このメンバーの本で勉強した方も多いのではないでしょうか)、抗菌薬とか微生物などはある程度理解してきたが、実際の症例、特に複雑な症例となった時になかなか診断に迫れない、実際感染症医がどういう思考をしているのか、そういったことを勉強する方にピッタリだと思います。
内容としてはやや難しく、医学生、初期研修医にはやや難しいかもしれませんが、思考過程を学べる本は少なくないので、ぜひ読んでみてほしいと思います。
感染症医に興味があるならこの4人の対談はなかなかないですから、読む価値ありますよ。
レビュー
この本は4人の先生方がそれぞれ持ち寄った3つずつの症例を4ラウンドに分けて、それぞれの症例について検討していきます。
症例に関して病歴、身体所見、検査所見などが順番に挙げられていき、それぞれのタイミングで他の先生方が追加コメントをしていきながら、鑑別診断をあげ、そして診断に迫っていきます。
snap diagnosisな面から、それぞれの症状に対するアプローチ、疫学的なもの、などなども含めてこう考えているんだ、ということを肌に感じられます。
まず挙げられてくる感染症、感染症以外の鑑別診断の鋭さ、そして切り口に驚かされると思います。
また、治療としても治療的な診断も含めてこんなアプローチするのかと勉強になると思います。
個人的にはHIV検査の考え方、アミノグリコシドを使っているときの聴力検査、IGRAなどの検査の解釈など非常にためになりました。
また、フロモックス(セフカペンピボキシル)がここまでの不利益をもたらすことも改めて再認識することになりました。
診たことがない病気も診断しなければ感染症医としてはfunctionできない、は重い言葉ですね。これは膠原病医としても身にしみました。
特に第3ラウンドの青柳先生の症例3はすごく考えさせられる症例でしたし、こんなこともあるのかと思いました。逆に自分が見逃しているのではないかと心配になりました。
追い続けることは大事なんですね、知識不足も改めて認識しました。
間違いなく感染症の考え方が変わる良書だと思います。
ただやはり凄腕の先生方の思考過程なので、すごく診断に迫るまでがキレイで賢くなった気は読んだ後するんですが、キレイすぎるという印象を受けました。
自分だったらこんなにうまく行かないかなあと思ってしまいました。(知識不足は否めないですが)。
もっと泥臭いところも知りたいというか、できたらこの4人が集まって研修医や専攻医がプレゼンする実際のカンファレンスや回診をして、診断に迫っていく過程を見られたら良いなあと思いました。
HEATAPP!のような雰囲気ですかね。
お忙しい方4人なので高望みし過ぎかもしれませんが・・・。
動画もあります、雰囲気わかりますのでぜひ見てみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=pJeuY0RfsPM&feature=emb_title
感染症に関わる方は一度手にとってみてください。
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